部下とホテルに行って「セクハラで訴える」と言われたら|刑事・民事・会社処分の三つのリスク

飲み会の流れで盛り上がり、部下とホテルに行き同意の上での行為だと思ってホテルをあとにした。ところが、後日、部下から「あれはセクハラだった」「会社に報告する」「訴える」とLINEが届いた――。

このようなご相談は、役職や社会的立場のある男性に多く見られます。この記事では、上司と部下という関係で「同意」がなぜ問題になるのか、そして、刑事・民事・社内処分の三つの観点から何が起こり得るのかを解説します。

想定されるご相談

部長職の男性が、部下と二人で飲んだ後にホテルに行った。当日は双方に好意的な雰囲気があり、拒絶されたとの認識はなかった。しかし翌週、部下から「断れなかった」「上司だったから我慢した」とのメールが届き、人事部に相談するとも書かれていた――。

上司と部下の関係で「同意」が争われる理由

当事者に好意的な雰囲気があった場合でも、上司と部下という関係には、評価や人事への影響があるため、部下が断りにくいという構造があります。刑法は、不同意わいせつ罪・不同意性交等罪の成立要件のひとつとして、「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること」により同意しない意思を表すことが困難な状態を挙げています(刑法176条1項8号、同法177条1項)。

つまり、暴行や脅迫がなくても、「上司の誘いを断ると評価や処遇に響くのではないか」という不安から応じた場合には、同意がなかったと評価される余地があります。「相手も楽しそうだった」「拒否されなかった」という事情だけでは、安心できません。

三つのリスクを分けて考える

① 刑事責任

同意がなかったと評価されれば、不同意性交等罪(5年以上の有期拘禁刑)などが問題になります。被害届が出されるか、警察がどう動くかは、証拠の状況や相手の意思次第です。

② 民事責任

不法行為(民法709条)に基づく慰謝料請求のほか、会社に対する使用者責任(民法715条)が問われる場合もあります。会社が賠償した場合に、行為者に求償される可能性もあります。

③ 会社での処分

事業主にはセクハラへの対応措置が義務づけられており(男女雇用機会均等法11条)、会社は申告を受ければ調査を行います。結果として、降格・異動・減給・出勤停止・懲戒解雇といった処分が検討される場合があります。刑事事件にならなくても、社内処分だけで職を失うことは起こり得ます。

社内調査にはどう対応するか

会社からヒアリングを求められたときは、次の点に注意してください。

  • 事実と異なる説明をしない(のちの客観的証拠と食い違うと、信用性を大きく失います)。
  • 記憶があいまいな点を推測で埋めない。
  • ヒアリングの前に当日のメッセージや行動を時系列で整理しておく。
  • 供述書・誓約書などへの署名は、内容を確認してから行う。

社内調査での説明は、のちの刑事・民事の場面でも使われる可能性があります。会社の調査に応じる前に、弁護士の助言を受けておくと安全です。

やってはいけない対応

  • 部下に直接連絡して、真意を問い質す・謝罪名目で接触する:圧力と受け取られ、状況が悪化します。
  • 同僚を通じて部下の気持ちを探る・説得する:口封じや二次被害を疑われます。
  • メッセージを削除する:証拠隠滅を疑われ、不利益が大きくなります。
  • 先回りして、自分の言い分を上層部に説明する:内容次第で、あとから不利な証拠になります。

会社に知られずに解決できるのか

相手がまだ会社に申告していない段階であれば、弁護士を通じた示談交渉によって、会社に知られないまま解決できる可能性があります。示談書には、口外禁止、接触禁止、今後の異議申立てをしない旨などを盛り込みます。ただし、すでに会社に申告されている場合は、会社の調査が先に進むため、社内対応と示談交渉を並行して進める必要があります。

弁護士に依頼するメリット

  • 刑事・民事・社内処分のそれぞれに、最悪の場合を見据えた対応を設計できます。
  • 相手との連絡を弁護士が引き受けるため、あなた自身は相手と直接やり取りする必要がなくなります。
  • 懲罰委員会や社内調査の運用を踏まえ、先回りした助言ができます。

【秘密厳守・初回相談無料】

相手方とのやり取りや会社・家族への連絡が始まる前に、まずご相談ください。弁護士が窓口となり、ご相談内容が外部に漏れることはありません。

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※本記事は一般的な法的情報の提供を目的としたもので、個別の事案についての法的助言ではありません。冒頭の事例は、実在の事案ではなく、よくあるご相談を踏まえた想定事例です。結論は事実関係や証拠によって大きく変わるため、具体的な対応は弁護士にご相談ください。